The solution by new technology
昔むかし、それは奈良に都があった頃のおはなし。
ここは総務省情報処理課。毎日のように繰り返される役人たちのぼやきが聞こえる。
「課長~、もう無理っすよ~、あれ導入しましょうよ~、あれ」
「ん~、あれって何ぞ?」
「も~、仮名っすよ、仮名!」
「何を言っとるか! ワシらの仕事は、昔から口伝えでいくと相場が決まっとるだろうが」
「オレもう無理っすよ、覚えられないッス」
「ん~、まぁワシにもそう思っとったときがあった。そうさの~、あれは今から30年ほど昔になるかの~」
「あ、オレ、課長の過去に興味無いッス。で、仮名、今流行ってるじゃないすか~、オレ、あれだったら絶対今よりもっと便利になると思うんすよねー」
「ん~、でも、書くなら書くで大陸語に直さんとあかんやろ・・・」
「え、違いますよ、課長知らないんすか」
「何を? だって、あれは唐の文字を使うんやろ?」
「そうなんすけど、和語のままでいいんすよ」
「ん~、何かようわからん。さ、続きやるぞ」
「ちぇっ・・・」
ちょうどその頃、上級役人の中では唐に習って日本独自の歴史書を作ろうという話が挙がっていた。
「ねぇねぇ、この前言ってたアレ、どう思うよ」
「そうさなぁ・・・、オレはやっぱ和語よりは漢語の方がカッコイイと思うんだよね」
「う~ん、でも漢語で作っちゃったら、役人ですらほとんどのやつが読めないよ」
「そうなんだよな~。しかし今のままの口伝えやと、なんか情報劣化しよるしなぁ・・・」
「書いたら覚えてるやつが仮に死んじゃっても安心やねんで。それに、がんばって一回作っちゃえば、覚えなくてもええし」
「仮名でかぁ・・・、なんか若者に迎合しているっつーか、ちゃらちゃらしてて俺は好かんけど。ま、一回作ってみよっか。予算申請しといてくれる?」
「・・・お前も手伝えよ、申請作業」
当時流行っていたこともあって、上からの許可はすんなり下りた。
「きみきみ! 上から仮名で歴史書作れって命令だ! きみ確か詳しいんよなぁ」
「え、マジっすかー、オレ知ってますよ、キャラクタエンジニア!」
「な、何そのきゃら・・・、小豆色っぽいのか?」
「ちょーうけるんすけど。キャラクタエンジニアですよ、CE!」
「あ? お前が仮名ってやつを使えるんとちゃうの?」
「そんなの無理に決まってるじゃないすか~常識的に考えて。じゃ、オレ今からそのCEっとこ行ってきます。牛車代出ますよねー」
「行きのお前の分は出さねーよ。帰りもお前は歩きね。あ、あと菓子折持っていくの忘れんな」
「マジっすか~、じゃ今夜呑みっすよ~」
部下が連れてきたのはオオノという男だった。
「あーどもども、ようこそ初めまして。わたくし、情報処理課の稗田と申します」
「あ、どども、わわわたしはおっおっおっおっ」
「どうぞリラックスして下さい。あ、なんですか、この木の板は? ダアンバンリョって読むのかな? どういう意味ですか?」
「こ、これは私のめめ名刺です。『オオノヤスマロ』ってかか書いてあります」
「あ、左様ですか。へぇ~、あなたの名前が書いてあるのですね。これが仮名ですか」
「そそそうです。えへへ」
「仮名というのは難しいんでしょ?」
「かか書くのはむ難しいです。けけけど、よよ読むのはカンタンです。むふー」
「へー、左様ですか。じゃ、どうでしょ、報酬は荘園で。ちょっと遠いですけど、そこそこ広いですよ」
「あ、あ、」
「あー失礼失礼、もちろんそれだけじゃないですよ。いやーこれ、たまたま手に入ったんですけどね、秋葉四十八娘の松シートチケット。これも差し上げますよ」
「や、やります!」
そして幾度かの打ち合わせを経て、太安万侶は草稿を書き記した。
「いいいかがですか?」
「うーん、いいねー、悪くないねー。うーん、なんつーか、もうちょっと格好良くならんかなー、この当て字はこっちの字にするとか、あ、全部換えといてね。あと1行にこれだけ詰め込むとやっぱ読みにくいから、3~4字ずつ減らしといて、全部ね。あさって締め切りね」
「・・・し、仕様書にはそそそんな」
「あーそうそう、この壁にかけてる美人図、誰かにあげようかなって思ってるんだけど、どうしよっかな、捨てちゃおっかな」
「か、必ずあさってもも持ってきます!」
そしてこの仮名で書かれた歴史書は瞬く間に流布した。数年後、上級役人による評価会議にて、
「ぶっちゃけ、どう? これ」
「う~ん、なんか一般受けはいいらしいけど・・・」
・・・てな感じで古事記が編纂されたのではないかと勝手に想像している。今も昔も変わらんのである、多分(涙)。
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