「プルースト効果」って言うらしい
上海で青島ビールを飲んだときの話だ。
青島ビールの王冠を抜くと、昔持っていたビールのイメージが強烈に呼び覚まされたのだ。
なぜか。王冠に秘密があった。
王冠の内側に、コルクが貼ってあったのだ。
あの何とも言えない苦い匂いが立ちこめて、私の脳内は今の日本のビールに失われた「ビールってこうやろ」っていう先入観、いや「私にとってのビールそのもの」がよみがえったのだ。
今日、私の両親がこの夏に宮古島へ行って来たお土産の泡盛「菊之露」を呑んでみた。
あけた瞬間、私に沖縄がよみがえった。泡盛呑んで歩いた炎天下の西表島40km。台風が直撃して、だけどスキューバーダイビングのツアー客に島の全ての民宿押さえられて、ジャングルで風をしのいだ夜。泡盛呑みながら砂浜に寝ころんでいたらものすごい数の産卵しに来たヤドカリに身動き取れなくなった夜。一日に3時間しか眠る時間が無かった先輩の調査の手伝い、すべて懐かしい思い出だ。泡盛の風味が、私の中に眠っていた様々な記憶・風景・感情を呼び覚ました。
こういう体験は皆さんあると思う。一般には「プルースト効果」と言うらしい。
「匂い」とか、「味」とか、思考よりもひとつふたつ脳の内側を刺激しそうなものはこういう心理状況を生みやすいだろう。
デジャブとか、フラッシュバックというのはちと大げさとは言わないが、そう言うほどではないけども昔の記憶や風景、感情を呼び起こすものってあるよね。
しかし・・・
最近野菜が頼りない感じがする。
人間というのはサルの仲間だから、基本的に果実なら生食しても大丈夫だと思う。いわゆる、果物全般はその類だろう。
ところが、最近西欧食の一般化による「サラダ」と称する野菜の生食文化が根付きつつあり、それが様々な問題を孕んでいる。
寄生虫とかそのあたりは私はあまり気にしてはいない。問題は、植物が持つ2次代謝物質だ。大げさに言うと、植物が食べられにくくするために生産した毒素である。
よく、「虫が食べてるくらいだから、美味しくて安全なんよ~」とか言う人がいるが、植物にも「誘導抵抗性」という性質がある。何かというと、虫に食べられるまでは作らないけど、虫に食べられ始めたら食べられ過ぎないように作り出す毒素のことである。もちろん、場合によっては人にも毒であり、農薬よりも深刻な場合があるかもしれないのだ。
話はちとそれるが、中国ではあるアブラムシが着いたお茶が特別な茶葉として扱われる。これはそのアブラムシが着くことによって茶の木が生産する毒物質が特別な風味を醸すらしいのだが、難しいことにある特別のアブラムシが、たまたま茶の木に着くことによってしか生産できないらしく、普通そのアブラムシは茶の木を利用しないし、人工的にアブラムシを茶の木に接種しても定着しないらしい。この茶葉は非常に高価で取引されている。
話を戻すが、人間には安全な農薬と、害虫が誘導した植物の毒とでは、時と場合によっては植物の毒の方が恐いこともあるのだ。そもそも人類はこれほどの野菜を食べるに至ったのは加熱という無毒化によるものであって、安易に生食に走るのは危険なのだ。サルも体の調子が悪くならない限り、葉っぱとか食べないのだ。なぜなら一般に、葉っぱには毒があるから。
話がそれすぎた。例えばの話である。私が子供の頃、ほうれん草を生食なんてもってのほかだった。茹でて食べても、苦手な私はえづいたものだ。ところがだ。最近はサラダに生のほうれん草が入っていて、しかも全然灰汁がない。
こんなの、おかしいと思わないといけないと思う。
自然界では、毒を持たないと食い尽くされるのだ。それを、灰汁すら持たずすくすく育った野菜など、どんな害虫管理をしたのかが知りたいし、知らないと不安極まりない。味に影響しない効き目バッチリの農薬たっぷしで育ったのだろうか。日本の野菜はそれなりに厳しい規制で農薬も使えるのは限られているし、使うタイミングとかも限られているので、それをちゃんと把握していればそれほど気にする必要はないかもしれない。恐いのは、そんな規制のない国から、解らないよう加工されて入ってきたものを、しかも国内でさらに加工して何が何だか解らなくなった食べ物だ。
農薬も含めて、毒を全否定する気持ちは毛頭無い。むしろ食の「安全」を確保するために必要な場合すらあるから。
しかし、生産者がぜったい口にしないようなものを食べたくもないなぁ。
えづくほうれん草、辛い夏大根、えぐい茄子、種の無いとこだけ渋い柿・・・
こんなん食べたいって言うの、おかしいけど食べたい。
今やゴーヤ(苦瓜)ですら、あんまし苦くないし。昔キュウリはちょっと苦かったし。
野菜の灰汁、えぐ味を感じたい。
で、話最初に戻るけど、苦い臭いのするコルクの王冠のビールって、多分鮮度最優先の今日日「美味しくない」部類に入るんやろなぁ・・・。
でも、そんな苦くて臭いビール、呑んだら多分旨いんやろなぁ・・・。
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